清涼飲料水として世界的な人気を集めているコーラ飲料は、かつては「薬」として販売されていました。コーラ飲料は19世紀に発明され、現在に至るまでの歴史のなかで形を変えて進化してきています。
本記事では、「薬」として販売されていたコーラの歴史について解説します。
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売薬としてコーラ飲料が誕生するまでの軌跡
世界初にして最も人気を集めているコーラ飲料「コカ・コーラ」は、19世紀後半にアメリカ ジョージア州で暮らすベテラン薬剤師のジョン・ペンバートン（以下、ペンバートン）によって生み出されました。
19世紀後半は「高いばかりで効果が薄い従来の薬」への不信感が高まり、市販薬である「売薬」に注目が集まっていました。売薬は誇大広告がはびこるものの、消費者にとって魅力的な選択肢だったのです。
売薬が誇大広告を出稿していた例として、不老長寿の薬「エリクシール」が例に挙げられます。
「知られている限りすべての病」を癒し、「足の不自由なひとは、これを二、三回服用すれば、松葉杖なしで歩けるようになる。（中略）リューマチ、神経痛、さらには胃、心臓、肝臓、腎臓、血液、皮膚の病が、まるで魔法のように消える」
引用：歴史を変えた6つの飲物 ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、茶、コーラが語る もうひとつの世界史｜楽工社 p253
ペンバートンはコカ・コーラを作る前から頭痛薬の開発に勤しんでおり、コカの葉に興味を示していました。コカの葉には覚醒作用があるコカインが含まれており、頭痛薬を作るのに適しています。そのため、ペンバートンや他の薬剤師はコーラ飲料を作る前に、コカインを含んだ錠剤や内服液、軟膏などを作っています。
その流れのなかで、ペンバートンはコカ・コーラの前身である「フレンチ・ワイン・コカ」というワインを開発し、売り出しました。
ペンバートンはフレンチ・ワイン・コカにコーラの実のエキスも加えました。
コーラは西アフリカが原産地で、コカと同時期にヨーロッパに持ち込まれています。コーラの実にはカフェインが含まれており、噛むと刺激作用があることから「魔法の薬」だと考えられていました。
フレンチ・ワイン・コカは順調に成長を続けていましたが、1886年にアトランタとフルトン郡議会で「アルコール販売を禁止する法案」が採決されてしまいます。（試験的に実施されたもので、1年4カ月で撤廃された）
それに対応すべく、ノンアルコールのコーラシロップを開発し、これを「コカ・コーラ」と名付けました。
コーラ飲料が薬としては利用されなくなった歴史的背景
コカ・コーラを開発したペンバートンは、1888年にガンで死亡。その後コカ・コーラの権利を引き継いだエイサ・キャンドラー（以下、キャンドラー）は、コカ・コーラを清涼飲料水としてプロモーションするようになりました。
売薬として販売されていた頃のコカ・コーラは、おもに薬局で販売されていました。当時はコカ・コーラを「頭痛の特効薬」として訴求していましたが、キャンドラーはこう考えました。
「薬として販売することには、効き目があるとされる諸症状を訴える者だけにマーケットを狭めてしまう危険性がともなう。対照的に、たんなる清涼飲料水とすれば、万人にアピールできる」
引用：歴史を変えた6つの飲物 ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、茶、コーラが語る もうひとつの世界史｜楽工社 p262
また、同時期に売薬の販売には税金が課せられるようになりました。しかし、コカ・コーラは売薬ではなく清涼飲料水としての販売に舵を切っていたことで、課税を免れることができたのです。
健康志向で注目を集めている「クラフトコーラ」とは
世界初のコーラ飲料が販売されてから1世紀半経った今、「クラフトコーラ」に注目が集まっています。クラフトコーラという言葉の明確な定義はありませんが、おもに手作りコーラのことを指します。
クラフトコーラに注目が集まっている背景には、近年高まっている「健康志向」があります。
かつては「健康の話題で盛り上がるのは歳を取った人だけ」といった考え方が一般的でしたが、最近はどの年代でも健康への意識が高まっています。
2022年に明治安田生命社が実施した調査では、「新型コロナウイルスの感染拡大前と比べ、あなたの健康に対する意識は高まりましたか」という問いに対して、43.9%の人が「健康意識が高まった」と回答しています。
出典：「健康」に関するアンケート調査を実施｜明治安田生命保険相互会社
一般的に認知されているコーラ飲料は爽快感が強い一方、人工甘味料など身体にあまり良くない影響を及ぼす成分も含まれていると認識されています。そこで、人工甘味料を使わず、スパイスを組み合わせて作られているクラフトコーラに注目が集まっているのです。
クラフトコーラはお酒が飲めない人でも、健康を意識する人でも気軽に飲むことができます。身体への負担を抑えて楽しめる嗜好品として、これから人気が集まっていくでしょう。
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